三渓園でしょーがい茶

 ことづくり・ものづくりデザインラボでは、「インクルーシブデザイン※」の発想に基づき、身体・知的・精神等の障害を含む様々な「違い」をポジティブに活用したこれまでにない活動の開発を目指しています。その実験的な取り組みとして、茶道のプロフェショナルの皆さんとのコラボレーション企画が実現しました。

※ものや環境・仕組みなどを作るプロセスに初めから障害者が参画することにより、すべてのユーザーに優しくデザインの優れた商品開発につながるとするデザイン手法。

 会場は横浜市民の皆さんにはお馴染みの三渓園。原三渓が最も愛したという歴史ある茶室「蓮華院」です。絶好の庭園散歩日和の10月の週末、茶道メンバーの皆さんと下見に出かけました。メインコースから少し外れた、寂れた茶室の佇まい、随所に歴史が刻み込まれた室内に入ると、茶会当日のイメージが湧いてきてワクワク感が高まりました。

表千家の若先生 吉田宗看さん率いる茶道チームが環境をチェック

 本格的な環境の中で、茶道ならではの趣や美の視点から妥協のないおもてなしを。なおかつ、畳に直接座ることが難しい片麻痺などのお客様、初めて茶会を体験する方々にも安心して参加していただけるように。準備のプロセスにおいても、文化人である茶道チームの皆さんが大切にする感性と福祉的な慣習などの「違い」に気づき、驚きと学びの連続でした。もちろん、お客様、関わる人全員が心から楽しめるように、との想いは全スタッフ共通!手を抜くことなく、また新型コロナ感染にも配慮し、様々な手配を進めていきました。


 茶会で使用する道具等は障害のある人が作ったものをできるだけ活かしたい。このイベントの企画者一般社団法人ノーマポートの高草雄士さん提案により、当初から考えていたことでした。そこで茶道に合うものを見つけようと、作業の現場に足を運びました。
 保土ケ谷区の地域活動支援センター陶さんは、センス良く使いやすい陶器づくりで人気の事業所。訪問時には多数の商品・作品だけでなく、利用者さんが職人としての技術をコツコツと身に着け発揮されている様子も拝見しました。

片手で素早く制作する山口さん
茶器、水差し、菓子皿をお買い上げ

 お菓子は神奈川区のB型事業所一の会さんの練り切りを。色とりどり、形も楽しい秋の季節のデザインのものを作ってくださいました。

柿、紅葉、銀杏など…かわいいだけでなく優しい甘さの本格和菓子

 いよいよ当日、茶道チームの皆さんが早朝から備品の搬入、室内の準備をしてくださり、茶室はおもてなしモードにあざやかに転換。晴天に恵まれた三渓園にて、11時から四席の茶会を開催し、計20人のお客様に来ていただきました。当日の様子は冒頭の映像にまとめましたのでご覧ください。

ご参加の皆さんからいろいろな感想が寄せられています。

  • 優しくお茶のこと、お作法のことを教えてくださり勉強になった。
  • 実際お茶をたてるところを間近に見ることが出来たのが新鮮だった。
  • お茶もお茶菓子も美味しく、とても楽しい時間を過ごせた。
  • 素晴らしい体験が出来た。先生が見せてくださった古い本に興味津々だった。
  • 初めての経験だったが、とても興味が沸いた。お茶について勉強してみようかなとも思った。 
  • 実際の茶室で体験できたことがよかった。

 お菓子作りを担当していただいた4名の利用者さんが着物で参加してくださった一の会さんは、「一の会だより」に当日の報告記事を載せてくださったそうです。

 「しょーがい茶」のネーミングは茶人でもある高草さんのアイデア。ネガティブなイメージを持たれる方もいるかもしれないですが、実は障害をポジティブに捉え、異文化が交わることでこれまでにない価値を生み出そうとする思いが込められています。

今回参加・協力いただいたみなさんがそれぞれこの企画から何か新しいものを感じてくださり、また参加したい、自分もやってみたい、との声が集まったことが何よりの成果だと思っています。吉田宗看先生、高草さんはじめ一流のサービスでもてなしてくださった茶道グループの皆さんに心から感謝します。そしてこの感動の輪を広げるべく、次の機会を作りたいと思っています!

この記事を書いた人

のり

NPO法人で働いています。専門は福祉現場とはちょっと違うソーシャルワークで、仕事の原動力はいつも「人への興味・関心」。日々のちょっとしたおもしろいこと、すごいと思うことは誰かと共有したい、おしゃべりしたい、笑いたい。でも時々一人で妄想する時間も欠かせない、そんな人です。